団地シェア居住

団地の再生を目的としたLLPを用いた単身者の「団地シェア居住(ルームシェア)」プロジェクト

担当:戸村達彦(D)
 

研究

・これまでの活動

入居者募集のお知らせ


これまでの活動

事業の検討


 

2005年秋、今後、高齢化、空き家の増加が予想される郊外分譲団地の住宅を有効活用し、団地の活性化を図りつつ、学生に良質な住宅を低廉な家賃で提供することを目的とした事業の検討を開始しました。

事業方法は、空家の所有者の方から住宅を借り上げ、複数の学生に転貸借を行う「サブリース方式」によるルームシェアとしました。また、事業組織は事業参加者のリスクを最小化し、役割に応じて自由に損益分配が可能な方法として、新たな組織形態である「有限責任事業組合(LLP)」を採用することとしました。

 

西小中台団地再生LLPの結成


 

2005年8月より施行された「有限責任事業組合契約に関する法律」に基づく新しい事業形態を活用し、2005年12月、「西小中台団地再生有限責任事業組合(LLP)」を組織しました。組合には大学教員(小林秀樹教授・鈴木雅之助教)、団地住民、まちづくりNPO(NPO法人 ちば地域再生リサーチ)が参加することになりました。

また、運営の方針として、出資額の多寡にとらわれず、事業において重要な役割を担う団地の住民の方が、働きに応じた配当を受けることが可能な、全国初の「コミュニティビジネス型LLP」とすることを決定しました。

 

入居者の募集


 

大学内へのポスター掲示やWebへの案内の掲載により、入居者(モニター居住者)の募集を開始しました。団地シェア居住の説明会には、本プロジェクトに関心を持った多数の学生が参加しました。

説明会の実施ではLLPのメンバーである大学教員、団地の住民の方に加え、研究室の学生、大家さんにも協力していただきました。

 

団地見学会の開催


 

説明会に参加していただいた方で入居を検討されている方には団地とシェア住宅の見学をしていただきました。

「団地は初めて」という参加者も多かったのですが、樹木の多い緑豊かな外部空間や、団地の住民であれば使用可能な集会室、テニスコート、駐車場などの共用施設、団地の方自ら作ったバーベキュー場や遊具、団地の夏祭りで使用する、本格的な山車(だし)やお神輿などに驚いていました。

 

入居者の決定


 

説明会、見学会に参加し、入居を希望された方の中からモニターとして入居していただく方を決定させていただきました。

入居者決定後、希望する部屋や、共同で準備する家電、共用備品の購入方法、掃除、ごみ出しなど、スタート時の基本的な居住ルールなどについて話し合いを行いました。

 

シェア居住のすまい方調査


 

2006年1月から、入居が決定した3名の方による「団地シェア居住」がスタートしました。シェア住宅にはダイニング・キッチン、風呂、トイレなどの共用部と各入居者が専用する個室がありますが、今回のモニター居住では、4ヶ月ごとに個室のローテーションを行っていただきました。

3人のモニター居住者の方に全ての個室を経験していただき、各個室の快適性、問題点などを指摘していただき、今後住宅の改良が必要な点の洗い出しや、モニター期間終了後の家賃設定を行う際の参考とすることとしました。すまい方調査では、部屋の広さだけではなく、部屋の独立性や共用部との位置関係が住み心地に大きく影響していることがわかりました。

 

モニター居住者との定例ミーティング


 

モニター居住者の方には4ヶ月に1度の部屋のローテーションごとに行うすまい方調査のほかに、1ヶ月に1度、研究室に来ていただき定例ミーティングを行いました。

定例ミーティングでは、1ヶ月の間に発生した問題や、暮らし心地、エピソードなどをお話いただきました。1年目のシェア居住では、学部、学年の異なる方同士で居住していただきましたが、居住者間で適度なコミュニケーションを行い、ゆるやかなルールを決めていたのみで大きなトラブルなく居住を行うことができていたようでした。

 

 

団地の行事への参加


 

シェア住宅居住を実施している西小中台団地では、団地の完成から30年以上を経過した現在でも、自治会や管理組合が活発に活動を行っており、1年を通して様々な行事や清掃、防犯、共助などを目的とした地域活動が行われています。

シェア居住者の方も、夏祭りを初めとした団地の行事などに積極的に参加し、「団地に住むこと」を楽しまれていました。

 

シェア居住経験者参加の懇親会の開催


 

入居者の入れ替わりが発生する時期などには、新・旧居住者さん、大家さん、LLPスタッフ、研究室のメンバーを交えた、バーベキュー、テニスなどを行う懇親会を開催しています。懇親会ではしばしば、通りがかった一般の団地の住民の方の飛び入り参加も発生し、そこで「シェア居住」について、知っていただくきっかけとなることもありました。

 

団地の住民の方との交流


 

現在は懇親会などの特別なイベントの時だけではなく、普段の生活の中でも日常的に、自然な住民の方とシェア居住者さんとの交流が発生しつつあります。LLPのメンバーの中に団地の方(家を守る人・・・「家守(いえもり)」さんと呼んでいます)がいることにより、一般の団地の住民の方も、親近感を持ってシェア居住者の方と接することができます。

1年目は女性1住戸のみでシェア居住がおこなわれていましたが、2年目からはもう1住宅加え、男性によるシェア居住も開始され、これまで11名の学生が団地でシェア居住を経験しました(2008年5月現在)。この間、発生した生活上の問題、アクシデントなどは、家守さん、住民の方との連携により、無事解決することができました。

家守さんの媒介するルームシェアによる住まい方は、現在全国で問題となっている、「単身居住者の地域住民とのコミュニケーションの断絶によるトラブル」を解決できる住まい方として可能性があるのではないでしょうか。(戸村)