2004.9.20

ナワバリ学の教え10 アパート設計の新潮流 コミュニティ志向の民間アパートが増加
(全国賃貸住宅新聞2004.9.20)

 最近の民間アパートには、ナワバリ学からみて興味深い事例が増えている。中庭を囲むアパート、豊かな共用施設をもつアパート、模様替えを認めるアパートなどである。民間アパートの発展を示すもので、大変喜ばしいことだ。

中庭をもつアパート

 写真は、中庭を囲むアパートの例だ。中庭があると住人どうしが顔を合わる機会が増えるため、アパートへの愛着が自然に育まれやすいというメリットがある。さらに、大家さんの音頭で、中庭でパーティを開くこともあるそうだ。

 昔は、賃貸アパートといえば、若者の一時居住の場にすぎなかった。しかし今日、結婚年齢が上がり、社会人単身者が多く住むようになった。学生ならばアパートはネグラと割り切れるが、しかし社会人にとって会社は安住の場というわけではない。安らぎの場を住まいに求める人々も多いのである。

 そのような単身者、あるいは共稼ぎの夫婦にとって、コミュニティ志向のアパートは快適だ。アパートだからコミュニティは無関係という発想は、時代遅れになっているようだ。

コレクティヴハウス

 その究極の姿がコレクティヴハウスと呼ばれる賃貸住宅である。単身者、働く女性、高齢者などが集まり、共用の食事室をもつ住まいだ。その背景には、家族の形が変化していることを受けて、互いに助け合って住んだ方が合理的だという発想がある。人間関係が嫌になれば引っ越しやすい点で、むしろ賃貸の方が向いている。もちろん、まだ例外的な存在にすぎないが、世間の関心は高まりつつある。

集住のナワバリ学

 以上の動きは、都市において、共に暮らす仲間を求める意識が強まっていることを示している。これに応えるには、ナワバリ学の教えがますます重要になる。

これまでの連載では、植木鉢の教え、小窓の役割、大家さんの役割、騒音への対処、等を紹介した。連載は今回で終了するが、さらに興味のある方は、拙著「集住のなわばり学」彰国社を参照して頂ければ幸いである。


中庭のある民間アパートの例