2004.8.16

ナワバリ学の教え5 植木鉢は防犯性を高める
(全国賃貸住宅新聞2004.8.16)


 第二回に植木鉢の話をしたところ、廊下に陽があたらないので、玄関ドアの色を一戸一戸変えるのはどうかという提案を頂いた。家らしさを色で表現しようというわけだ。しかし、あらかじめ与えられた個性ではうまくいかない。入居者が自ら手を加えて生み出す個性が、ナワバリ意識につながるからである。

 もし、陽が当たらないならば、個性的な表札を飾ることが有効だ。面白いことに、植木鉢が置かれている場所では、個性的な表札は流行らない。逆に、中廊下などで植木が育たない場所では、表札やシール、置物が流行ることがある。それも、自分らしさの表現の一つである。

防犯性を高める効果

 引き続いて、植木鉢の効果を紹介しよう。

 アメリカの研究で、家の前で草花を育てることの効果を検証したものがある。なんと、犯罪を抑止する効果があるのだという。

 その理由が面白い。空き巣狙いは、綺麗な草花をみると、そこの住民は世話好きで、戸外に関心を払い、何か異変があれば警察に通報しそうだと推定するのだという。日中は働きに出ているから住民の眼は無いと悲観する必要はない。犯罪者は、実際に見られているからではなく、見られるかも知れないという意識により犯罪を躊躇するそうだ。逆に、草花がなく、窓や扉が固く閉ざされた住宅地では、そこの住民は戸外に関心を払わず、犯罪者と隣人の区別さえつかないと推定する。安心して仕事ができると判断するわけだ。

顔見知りを増やす効果

 筆者の研究では、植木鉢が多いほど、顔見知りが増える傾向がみられる。その理由の一つに、家の前に植木鉢を置くと、その手入れのために戸外に出る機会が増えることがある。その時に、隣人と顔をあわせやすく、しかも植木鉢を介して「綺麗な花ですね」と声をかけやすい。

 アパートに顔見知りが増えると、そこの住民と不審者を区別できるようになる。見知らぬ人がいれば注視し、何かあれば警察に通報しようとする。その結果、防犯性は高まり、長く住み続けたいという意識につながる。小さな植木鉢の大きな効果といえよう。

植木鉢は隣人との出会い生む