2004.8.9

ナワバリ学の教え4 持家感覚を生むスケルトン賃貸
(全国賃貸住宅新聞2004.8.9)

 スケルトン賃貸とは、大家さんは建物のスケルトン(構造体部分)だけを貸し、間取り内装は、入居者が自己負担で造る仕組みである。店舗では一般的に行われているが、住宅でも、最近、実例が登場するようになった。

スケルトン賃貸の効果

 最初の実例は、旧住宅都市整備公団によるフリープラン賃貸住宅だ。その第一号は、1986年に東京の光ケ丘ニュータウンで完成している。内装費の4〜5百万円を入居者が負担するが、その代わりに自由設計できることがメリットだ。

 当然ながら、自分の家だというナワバリ意識は強い。いわば持ち家感覚であり、定住率も高い。興味深いことに、家の中だけではなく建物全体にも持ち家感覚が広がっている。以下は、ある居住者の言葉。「ここの居住者は建物を大切にする意識が強い。賃貸でありながら、共用部分も自分の家のように大切に管理する」。ナワバリ意識の思わぬ効果といえよう。

大失敗の原因

 しかし公団は、この仕組みはコリゴリだという。その理由は、退去した時に公団が内装を買取る仕組みにしたからだ。次の入居者のために改修が必要で、結局、買取り費用が損失になってしまった。この問題を解決するためには、入居者同志で内装を自由に売買できる仕組みにするとよい。公共賃貸住宅では公募の原則があって難しいが、民間なら可能のはずだ。

民間での試み

民間では、(株)白石が2002年に東京都大田区で実現している。次の入居者に内装を売ることができる仕組みだが、もし次の入居者が見つからなければ、内装を除去しなければならない契約としている。大家側からみて、勝手に次の入居者を決められるのは不安だというならば、定期借家権を活用するのも一案だろう。今後、検討してみたい方式だ。

中古のスケルトン賃貸化

また、神奈川県の公社は、古い賃貸住宅において、入居者が自己負担で内装をリフォームできるようにした。二十戸ほどが実施している。これからは、中古住宅のスケルトン賃貸化が、民間アパート経営の注目の的になるかもしれない。

フリープラン賃貸の仕組み