2004.8.2

ナワバリ学の教え3 入居者が手を加えられる賃貸アパート
(全国賃貸住宅新聞2004.8.2より)

 賃貸アパートでは、入居者によるリフォームを禁止したり、退去時に現状に戻すことを義務づけたりしていることが多い。しかし、このことはナワバリ意識を低下させ、仮の住まいという意識を助長する。そこで注目されるのが、リフォームを認める賃貸経営である。

中途半端なナワバリ

 ナワバリの条件とは、その場所を自分の意のままに支配できることである。そこで、アパートの入居者は、自分なりに家具を置き、カーテンや絨毯をしつらえることで、そこを自分のナワバリにしようとする。ところが、賃貸アパートでは、柱に釘を打つのも不自由で、壁紙も変えられない。このため、いわば中途半端なナワバリになる。

買取り請求権が自由化

 なぜ、リフォーム禁止が普通になったのだろうか。その理由の一つは、内装造作買取り請求権というものが存在したことにある。これは、入居者がリフォームすると、退去するときに大家にその費用を請求できる権利だ。これが法律で認められていたために、大家は費用負担を避けようと、リフォーム禁止や現状復帰を課すようになったのである。

 しかし、平成3年に法律が変わり、入居者と大家が同意すれば契約は自由になった。つまり、「退去時にタダでおいていけば、リフォームしても構わない」という契約が可能になったのである。

リフォームできる賃貸

 そこで、特殊な改造でなければリフォームを認める賃貸住宅が増えつつある。例えば、水道の蛇口を交換したり、便所にコンセントを付けたりする改造は、大家からみても歓迎だろう。もちろん、このような小さなリフォームでも、ナワバリ意識の向上には確実に貢献する。これからは、入居者のリフォームを歓迎するアパート経営を考えたい。

スケルトン賃貸の登場

 また、入居者負担で、数百万円かけて大がかりなリフォームを実施した例もある。ただし、賃貸では少数例にとどまる。これを一般化するためには、入居者が、内装を次の入居者に売ることができる新しい仕組みが必要だ。これを「スケルトン賃貸」と呼ぶ。詳しくは次回に紹介しよう。


賃貸住宅を入居者がリフォームした例