■導入                担当:新井

人間の生活の根本に大きく影響を与える居住環境とはどうあるべきか。

今後の高齢社会における住環境とは如何にあるべきなのか。

昭和30年代に建てられた公団賃貸住宅は建て替えの時期を迎えている。

一時に入居する住民が多いため、高齢化が一般の住宅に比べて著しい傾向にある。

特に郊外大規模住宅団地では高齢化が著しい。

都心回帰の影響もあり郊外の経済も小康状態にある。

このようなことから、今後の高齢社会に対応した団地再生のあり方を考える。

■研究事例

以上の背景をふまえた上で、以下のような調査をしている。

α.住民主体による集会所計画案作成

β.単身高齢者の住まい方調査

γ.単身高齢者に影響を与える空間特性(進行中)


□住民主体による集会所の計画案作成

1.研究背景

船橋市高根台にある4600戸の大規模団地です。昭和36年に入居が開始され豊かな緑とゆったりとした棟間隔で静かな住環境を形成してます。現在では建物の老朽化と設備の陳腐科に伴い建替えが行われています。公団の建替えに合わせ、住民自ら建替え対策部会団地建替え委員会を開きました。対策委員会の中に、間取り部会、高齢者対策部会、公共公益部会、配置部会の4つの部会を設置しました。本研究では、その中の高齢者対策部会に焦点をあてます。この部会は、公団とのパートナーシップにより新たな質の集会所の計画を立てることになりました。そこで、この集会所の計画案がどのようなプロセスでできていったのかを見ていきます。

2.研究目的

公団・居住者有志の協調・協働の有効性と可能性を明らかにすることを目的とします。

3.研究対象

千葉県船橋市高根台団地

4.調査内容

高齢者対策部会で交わされた発言及び計画案の変遷から、住民、公団、福祉ボランタリーグループがどのように影響し合ったのかを検証します。

5.考察

高齢者対策部会では公団の集会所計画案が出される前に住民案を作成していました。公団案が住民に提出され、公団案と住民案のすり合わせをしていく中で、徐々に公団と住民との協調・共同の関係ができていきました。新しい集会所には開放的なラウンジとデッキが設けられ、福祉ボランタリーグループの詰め所が計画されました。

6.まとめ

公団と居住者が協働して計画案を話し合う仲で、居住者に求められていた開放的な集会所が計画され、住民有志と公団のパートナーシップが生まれた。

7.これから

公団と住民の協働の可能性を探ることは、新たな質の住環境を創造する可能性となることがわかりました。この可能性を広げることで、住環境を質的にも物理的にも高めていくことが期待できます。

□単身高齢者の住まい方調査

1.研究背景

高齢社会を迎え、独居高齢者の閉じこもりや、孤独死が問題視されています。そのような中、船橋市高根台団地のテラスには単身高齢者が多く住んでいます。そこで、独居高齢者の生活を成立させる用件を明らかにすることで、今後の高齢者居住に安心感を加えることが可能となると考えられます。

2.研究目的

高齢者が精神的に健全でいるのにもっとも大きな影響を与えると考えられるコミュニケーションに焦点を当てます。建替え前後で連続居住している高齢者からコミュニケーションに変化をヒアリングし、その変化に影響を与えた空間特性を明らかにします。

3.研究対象

千葉県船橋市高根台団地のテラス型住棟に住む単身高齢者

4.調査内容

アンケート調査及び、ヒアリング調査・住戸採集

5.まとめ

単身高齢者の安心・自立居住を支える用件は、住み続けられるということ、いざというときに助けにきてくれる息子家族がいること、近所に生活支援をしているボランティアがいること。

6.これから

離れとしての部屋と、生活空間をライフスタイルの変化に応じて柔軟に対応できるということ、身近に頼れるボランティアがいることが、今後の単身高齢者の居住に必要である。

□単身高齢者に影響を与える空間特性

1.研究背景

現在行われている公団賃貸住宅の建替えは、ほとんどが高層棟となっており、テラス棟はなくなり、中層棟もほとんど姿を消しています。建替え前に、日常的かつ偶発的な出会いを創出していたテラス空間の利点と課題点を今後の建替えに活かすことで、建替え後の住環境の質を高めることが期待できると考えられます。また、建替え後は高齢者優遇措置等の理由で、高齢化が進む傾向があります。さらに、高齢者の閉じこもりや孤独死が問題視されています。閉鎖的な傾向のある建替え後の住戸に、建替え前の開放的なテラスの要素を組み込むことで、日中閉じこもりがちな高齢者にとって精神的に健康でいられる住環境が創造できるのではないかと考えています。

2.研究目的

新旧団地で住み続けている高齢者のコミュニケーションの変化をヒアリング調査し、団地の空間特性がどのような影響を与えているのかを明らかにする。

3.研究対象

関東地方の郊外を中心に団地を選んだ。対象団地はコンフォール草加団地、サンヴァリエ桜堤団地、金町団地、アルビス前原団地、青砥団地。対象者は建替え前後で継続して住んでいる高齢者および、自治会長、事務局長などに対してのリーダーヒアリング

4.調査内容

建て替え前後のコミュニケーションの変化をヒアリング調査し、空間特性の変化がどのように影響を与えたのかを明らかにする。

5.進捗状況

リーダーヒアリングを通して、高齢者のコミュニケーションは住戸近傍から、ビオトープや集会所といった、共用空間に移ってきているのではないかという傾向が見られている。

住民が関わった集会所計画案