団地改善研究会 

日時:2005/05/26 18:00〜20:00

場所:新建築家技術者集団事務所(新宿)

参加者:新建築家技術者集団:江国、鎌田、新井(英)、坂庭、斉藤

辻堂団地住民:会長、他2名

千葉大学小林研究室:新井(信)、長谷川、高橋、藤原

 計12名

団地改善研究会に参加させていただきました。この日の研究会は辻堂団地の団地建替対策委員会の方が作成した団地建替え草案をもとに話し合いを行いました。その内容をみなさんにも紹介します。

まず辻堂団地建替対策委員会が草案作りのために行った神奈川県の様々な団地見学の感想から、現在の機構による建替え事業の問題点が指摘されました。1つ目には再生という概念が普及し始めた今日でも都市再生機構(以下、機構)からの一方的な建替えの通知がなされ、住民の意向が反映されない建替えが行われているということ。2つ目には機構の建替えの方式として建替えの全体像を示さない期別方式では住民は生活設計が立てられず不安であるということが指摘されました。それに対して公団OBから機構の立場として独立行政法人化に伴い、これまで築き上げてきた住民と公団(現、機構)の協力関係による建替えよりも経済性を重視した建替えをせざるをえないという状況が説明されました。

その一方で住民の間での課題点もいくつかあがりました。それは住民の中でも建替えに対して様々な意見がありその調整が大変であるということです。

(1)建替えに対して意識が高い人

(2)建替えは機構がしてくれるものと機構に頼り切りの人 

(3)現在の環境に満足しており、むしろ建替えによる家賃の上昇などで現在の生活が破綻しかねないため建替え自体に否定的な人

このように住民の間でも建替えに対して考え方にズレがあります。特に(3)について考えることは現在の建替えを反省し今後の団地再生のあり方を考えるきっかけとなりました。建替えという手法は必ず家賃の上昇を伴うため、建替え後は家賃減額措置がとられる高齢者以外には戻り入居がしにくくあります。よって住民の意向を反映した建替えをしたとしても、建替えという手法で行われる限り、収入の少ない住民は外に出て行かざるを得ません。団地全体で考えれば建替え後に団地に住み続けることが困難な住民が多数いることを認識した上で、皆が住み続けていけるバランスのとれた再生を考えていく必要があり、そのための細かい要求は機構には把握できないことから、住民が声をあげて主張していく必要があります。そしてそのための住民の間での関係づくりを行うことが(1)に該当する建替えについて考えている人たちが今後すべきことであるといえます。

 このように現実に建替えを控えている住民、様々な社会的な要因から身動きの取りづらい機構という双方の意見から今後の団地再生の1つの方向性が見えました。それは既存住宅(住棟)を活用していく再生のあり方です。既存住棟は老朽化が進んでいるものの、しっかりとメンテナンスを行っていけば家賃の安い住宅として活用できます。特に1DKのような間取りであれば現在のように単身者が増えている状況からかなりの需要があると思われる。これから新規供給を行えない機構としては、今まで以上に現在の居住者の意向を的確に把握し、建替えだけではないストックを活用していくというような柔軟な団地再生への対応が求められているといえます。

 

(報告:修士2年 長谷川)

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